制度理論の「デカップリング」とは? CSR対応がローカル企業で見せかけになる理由
コーネル大学ジョンソンスクールに掲載されていた、Eunmi Mun, Jiwook Jun 先生の論文の中に以下のような引用がある。
“According to institutional theory, decoupling—a gap between formal policy and implementation—is likely to occur when organi- zations respond to normative pressure (Meyer and Rowan, 1977). Oliver (1991) suggested that decoupling is most likely when there is no clear cost from non- compliance and the external demand imposed on organizations is not well aligned with their internal logics. Because the global norm of CSR promotes voluntary compliance and primarily targets global market actors, local organiza- tions may see this new normative pressure as irrelevant to their operations and adopt socially responsible practices to improve their public image without actu- ally intending to implement them (Delmas and Montes-Sancho, 2010; Marquis and Qian, 2014; Kim and Lyon, 2015; Marquis, Toffel, and Zhou, 2016)”
つまり、世界的な規範的圧力と、ローカル企業内の規範が違う場合、見かけだけ対応したふりして、中身は変わらないというものだ。とくこれらグローバルな規範はグローバル多国籍企業を対象に作り出されたものであり自社には無関係と考えており、またCSRは規制でなくボランティアベースなので、べつに応じなくても明確なペナルティがない時、公式のポリシーと実際の実行の間にデカップリングが起こるというものである。
これは近年の例で言えば、吉野家が表向きは国籍を問わない多様性採用を謳いながら、実際は極めて差別的なオペレーションを行なっていた事例が典型的なケースと呼べるかもしれない。
この論文では、このデカップリングを防ぐために二つの条件が有効だとしている。一つは国際的な規範への順応を促すステークホルダーグループの存在。これは社会的責任を意識した投資をする機関投資家の存在などが挙げられる。もう一つは社内の政治的な反発を抑えて国際的規範への順応を推進するメディエーターとしての役割を果たす、プロフェッショナル集団の存在だ。